1、背景
日本における少子高齢化は急激に進んでいると言われて何年も経ちます。少子高齢化は市町村の存続の危機をもたらしますが、それは同時に、その地域が有する特有の文化の消滅をも意味します。
宝達志水町においても少子高齢化による人口構成への影響が強くみられており、最低行事、いわゆる「お祭り」の担い手が減少しています。近年では新型コロナウィルス感染症(COVIT-19)の感染拡大によって開催していない地区が多く、技術を継承できていないことも原因の一つとなっています。
住民にとってお祭りは「生きがい」の一つであるという声が多く、祭礼の日を「第2のお正月」と言う人や「それがないと一年がはじまらない」という人もいます。この文化が消滅することは1人の住民(私)として非常に悲しく感じました。また、心身の健康という観点からは地域住民の将来的なQOL(Quality of Life)を低下させ、持続的なウェルビーイング(Well-being)が損なわれる可能性があります。
2、目的
そこで、宝達志水町南部を初めとして祭礼行事のデジタルアーカイブを作成することにしました。アーカイブ時には写真撮影、動画撮影、音声の収録を行い、電子媒体として保存を行います。これは単に祭礼や練習の風景を見栄え良く撮影するということにとどまらず、使われている特有の名前や儀礼の動作についての完全な記録を作成することを最終目的としています。
この事業によって次のような効果が期待されます。
効果1:祭礼をアーカイブ化することによって、担い手がいなくなっても再開することができる。これにより当該地区の祭礼文化が消滅せず継承できる。
効果2:1つの区における祭礼のアーカイブ化を経験することによって、そこで必要な技術、費用、期間、成功例や失敗例を明らかにすることができる。これらの経験知を元にして祭礼のアーカイブ化のルールづくりが可能となる。定式化されたアーカイブ方法は当該地域のみならず、全国、全世界への展開が期待される。
3、令和5年度での活動
令和5年度では、協働しているNPO法人宝達スポーツ文化コミッションと何度も打ち合わせ、協議を重ね、祭礼行事の練習場での動画と写真撮影、祭礼行事当日の撮影、成果お渡し会など多くの活動を行うことができました。
4、結果とまとめ
本年度での成果は1)祭礼行事全体の確認とアーカイブ化すべき対象の確認、2)撮影などに必要な物品の購入、3)行事の一部をアーカイブ化、4)関係団体との次年度以降の関係構築、だったと考えています。なおアーカイブ化された動画ファイルは、それを収めたタブレット機器とともに祭礼催行代表者に謹呈しました。
本年度は正式な活動の初年度であったことを鑑みると、スタートアップとして必要な活動を網羅できたのではないかと考えています。今後の課題として、1)祭礼で使用する道具類の撮影とアーカイブ化、2)深夜帯での獅子舞の記録、3)獅子舞の教本的な動作確認のための動画撮影、があります。1)については実施が容易であることから優先順位を下げていたため未実施でしたが令和6年度の活動の目玉の一つです。令和6年度も撮影機器を揃え、継続して活動を行っていきたいと考えております。